1.麻疹ウイルスHエンベロープ蛋白とSLAMの結合を詳細に調べるだめに、レセプター機能をもつSLAM Vドメイン内のキメラ分子の作製および部位特異的変異導入を行った。その結果、61番目のhistidineおよびその前後の数アミノ酸残基がレセプターの機能に重要であることを明らかにした。 2.神経細胞における麻疹ウイルスの持続感染であるSSPEの患者から分離されたウイルスはSLAMをレセプターとして使う性質は保持しながらも、サル腎由来のVero細胞などにSLAM、CD46非依存性に低効率で感染することを明らかにした。 3.SLAMは麻疹ウイルスだけでなく、同じモルビリウイルス属に分類されるジステンパーウイルス(CDV)や牛疫ウイルスのレセプターとしても機能する。われわれはイヌSLAMを安定に発現しているVero細胞を樹立し、ジステンパーのイヌから24時間以内に高率にウイルスを分離できることを示した。このことは、SLAMがモルビリウイルスに対する体内での主要なレセプターとして働いているという考えを強く支持する。また、CDV H蛋白のアミノ酸1残基の変異でCDVはイヌSLAMだけでなく、サルやヒトのSLAMもレセプターとして使えるようになることを明らかにした。 4.麻疹ウイルス感染の動物モデルとしてヒト型SLAMを発現する遺伝子改変マウスを作製した。マウスSLAM遺伝子のVドメインをコードするexonを、対応するヒト遺伝子exonで置換えたES細胞を使って遺伝子改変マウスを得ることに成功した。このマウスはトランスジェニックマウスと違い、生理的なSLAM遺伝子発現が期待できる。実際、胸腺および脾臓細胞でヒト型SLAMの発現を認めた。
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