1.麻疹ウイルスの細胞レセプターであるSLAMは活性化したリンパ球、マクロファージ、成熟樹状細胞に発現している。免疫応答におけるSLAMの役割を明らかにするために、SLAMノックアウトマウスを作製した。これらのマウスには一見して明らかな異常は認めなかった。SLAMノックアウトマウスのCD4陽性T細胞は、CD3刺激による細胞増殖、IFN-γ産生は正常マウスとほとんど差を認めなかったが、IL-4、IL-13のようなTh2サイトカインの産生が著しく低下していた。 2.我々は先に、マウスSLAMは麻疹ウイルスレセプターとして機能しないこと、ヒトSLAMのVドメインがレセプター機能に必要十分であることを明らかにした。そこで、麻疹ウイルス感染の動物モデルとして、マウスSLAMのVドメインをコードするエクソンを、対応するヒトSLAMのVドメインをコードするエクソンで置換えた遺伝子改変マウスを作製した。フローサイトメトリーにより、本マウスの胸腺および脾臓細胞は期待通りヒト型SLAMを発現していた。脾臓細胞をin vitroでGFP発現組換え麻疹ウイルスに感染させると、正常マウスでは感染はほとんど見られないのに対し、遺伝子改変マウスでは多くの細胞がGFP陽性になった。また、遺伝子改変マウスの脾臓細胞に麻疹ウイルスを感染させると、ウイルスの増殖が観察されたが、正常マウスの脾臓細胞では全く増殖が見られなかった。 3.麻疹ウイルスのP遺伝子にコードされているアクセサリー分子であるV蛋白、C蛋白に抗インターフェロン(IFN)活性があることが報告されている。麻疹ウイルス株間にIFN感受性の違いがあることを見出し、その解析からV蛋白の抗IFN作用にとって重要なアミノ酸残基を同定した。また、P蛋白や、N末端領域だけを持つ短いV蛋白にも抗IFN作用があることを明らかにした。
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