研究概要 |
マウス腹膜炎誘発敗血モデル(cecal ligation and puncture ; CLP)時の浸潤マクロファージにはCCR8の発現増強がみられた。そこで,本モデルにおけるCCR8の生物学的意義を知るために、CCR8-/-およびCCR8+/+にCLPを行い,敗血症に伴う致死率を比較すると、CCR8-/-マウスではCCR8+/+に較べその生存率は有意に高かった。このとき,腹腔内および血中の菌数はCCR8-/-マウスで有意に低く,in vitroにおける菌消化能はCCR8-/-マクロファージで増強していた。腹腔マクロファージのLPS刺激培養上清中の活性酸素、ライソゾーム酵素、一酸化窒素(NO),TNFαおよびCXCL10の産生量は,CCR8-/-マクロファージで有意に高かった。また、脾細胞をconAで刺激した培養上清では,CCR8-/-脾細胞はIFNγ,IL-12の高値,IL-4,IL-13の低値を示した。以上より、CCR8-/-マウスでの免疫反応は自然免疫に必須なI型免疫反応にシフトし、細菌排除に効率的であることが示唆された。 次に、本モデルでのCCR8のリガンドを検索した.すると,CLP後の腹腔内でのCCL17の一過性上昇が検出され,CLPマウスに抗CCL17抗体を投与し、腹腔内および抹消血中の細菌数を検討すると、抗体投与群ではコントロールに比べ有意な菌数の増加が観察された.このときの腹腔内TNFαおよびCXCL10の産生量はコントロールに較べ有意に増加していた。したがって、CCL17は敗血症時の自然免疫反応を抑制する作用を持つことが示され、CCR8-CCL17の作用は自然免疫時の生体防御に負に働くことが示唆された。
|