研究課題
本年度は計画の2年目に当たり、初年度に得た研究実績をもとにして、さらなる研究の深化と発展を達成することができた。目下のところ研究分担者8名(吉田、田口、秋山、大浦、森本、永盛、石井、増田)およびゲストスピーカー水野尚氏によるシンポジウム形式の研究発表がおこなわれ、それぞれの分野で身体の問題にかんする研究の進行状況が明らかにされた。吉田城は、2002年6月にパリで資料調査を行い、研究の一端をパリ第8大学の国際シンポジウムで「ネルヴァル、プルースト、芥川における母親の問題」という題目で発表した。また、身体機能の欠損が文学想像にどのような形でかかわっているか、プルーストにおける喘息と呼吸の問題を機軸に論文を書いた。また比較文学的な視点から、明治大正期の日本の小説における「散歩」と、フランス文学における散歩を文化的視点から研究している。田口紀子はロマンス語学会で発表した内容を、「虚構における夢の言説分析」という論文(仏語)にまとめた。夢を語る言説がはらむ語りの問題を浮き彫りにしている。増田真はルソーの著作『エミール』における心身の発達と感性の問題を考察した。石井洋二郎は研究会においてロートレアモンの『マルドロールの歌』に見られる暴力的身体の主題をキリスト教的価値観やブルジョワ道徳への一種の挑戦としてとらえ、精緻な分析をおこない、論文にまとめた。全体として、各研究分担者は着実に問題点の拡大に努力しており、その実も上がり始めている。さらに連携を密にして、討議を重ねていきたい。
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