平成15年度は以下の2つの実験を中心に行った。 1)宇宙背景放射干渉計の開発実験および干渉計システム構築 干渉計システムに使用する予定の200GHz帯一体型ミキサーの前段の実験として40GHz帯でのミキサー実験を行った。このミキサーは種々の素子が装着できるが、今回は装着予定のPCTJ素子を用いることで40K程度の低雑音性能が実現できた。もう一方の構成要素である組み込み型低雑音増幅器は前年度製作のプロトタイプでは達成していた低雑音性能が実現できず、製作した増幅器毎に性能がばらつくことがわかった。これはさらに開発実験をすすめる必要があることを意味する。また干渉計システム自体の組み立てを進めたが、上記ミキサーに注入する局部発振システムの位相が外気温変化に対して大きく変動することがわかった.この安定性問題のため、全体のテストまでには至らなかった。 2)国立天文台野辺山45m鏡での宇宙背景放射の揺らぎの観測および観測受信装置の整備 これはもともと1)での観測の校正のためのものであったが1)のシステムが観測には至っていないこと、この観測目的で野辺山望遠鏡のマシンタイムを大規模に獲得できたこと、また上記実験で開発したミキサーが高性能であり新しい知見が予想できたことそして実際それ自体で新しい知見が出始めたことなどの理由から精力的に進めた。この観測の場合検出されるのは1次揺らぎではなくて、銀河団高温プラズマによるスニヤエフゼルドビッチ(SZ)効果である。これは従来βモデルで良く記述されると報告されていたが我々の高分解能観測でSZ効果の内部構造が見えてきているようである。少なくともX線観測で複雑な温度構造を持つ銀河団のSZ効果は単純なβモデルでは記述できないようである。
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