研究概要 |
当研究最終年度である平成15年度は、B中間子崩壊の精密測定から以下のような特筆すべき結果を得ることができた。中性B中間子がファイ中間子とKs中間子に崩壊する過程のCP非対称性の大きさが小林・益川理論の予言と食い違っていることを発見した。この崩壊過程は、ペンギンダイアグラムと呼ばれる量子トンネル効果のため、新しい粒子など標準理論を超える物理に対する感度が高い。本年度は、1億5200万個のB中間子反B中間子ペアのデータから、ファイ中間子とKs中間子に崩壊する事象を68例見つけた。今回の非対称度の測定値は、S=-0.96+-0.50+0.09-0.11で、期待される+0.73からずれている。この結果が統計のゆらぎである確率は0.05%で、3.5σの統計的有意さに相当している。このずれが新しい物理に起因するかどうか確定するには、さらにデータ量を増やして統計精度を向上させる必要がある。 中性B中間子の二つの荷電パイ中間子への崩壊は、CP非対称の出現が期待される崩壊モードの一つであるが、分岐比が10^<-6>ときわめて小さく、かつグルーオンを含むプロセスからの寄与もあり、CP非対称かどうか決定することができなかった。今年度は、統計精度の向上に成功し、5.2σの統計的有意さでCP非対称を証明した。さらに、粒子と反粒子の崩壊幅自身の非対称である直接的CPの破れについても、3.2σの証拠を得た。 超対称性の効果が出現すると期待されている代表的なB中間子の崩壊モードのうち未発見であった、B中間子のK*中間子とレプトンペア(μμ,ee)への崩壊モードの発見に成功し、その分岐比を(11.5+2.6-2.4+-0.8+-0.2)x10^<-7>と決定した。また、昨年度世界に先駆けて、その検出に成功したB中間子のXsllモードへの分岐比の高い精度での測定も行った。後者については、論文を制作中である
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