研究概要 |
(1)周期磁場変調下の2次元電子系の電気抵抗に現れる余剰抵抗がΔρ=AT^2+Cの温度依存性を示すことを見出し,T^2に比例する項が電子電子散乱効果に起因すること,定数項は残留低抗をもたらす不純物散乱と変調磁場との複合効果であること,を明らかにした. (2)磁場磁気バリアーを通した2次元電子系の伝導を調べ,モノポーラー磁気バリアーとダイポーラー磁気バリアーでのふるまいの違いを見出した. (3)ランダウ準位占有率がν=3/2近傍の複合フェルミオン領域における磁気抵抗の整合振動(幾何学共鳴効果)を観測し,その共鳴条件の解析からν=3/2複合フェルミオンが完全スピン偏極しているとの結論を得た.また,超短周期変調をもつ量子井戸の量子ホール状態においてν=奇数のスピンギャップが顕著に抑制される効果を見出した. (4)高次ランダウ準位の半占有状態におけるストライプ相(電荷密度波相)が短周期変調ポテンシャルによってどのような影響を受けるかを調べ,ν=5/2から25/2の広い範囲にわたってストライプ相の出現を示唆する磁気抵抗ピークを観測した.サイクロトロン半径と変調周期との整合関係がストライプ相の安定性に反映される様子が捉えられた. (5)アンチドット格子における伝導を電子密度およびアスペクト比を変化させつつ調べた.アスペクト比の大きい場合には,整合振動など半古典モデルで理解できるようなふるまいが見られ,一方アスペクト比が小さい場合には低温でAAS振動やAB振動など量子効果が観測された.
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