GaAs正孔系の電界効果型トランジスター試料を作製し、ウィグナー固体が形成されていると期待される絶縁体領域まで正孔濃度を減少させて、温度、磁場、キャリア濃度を制御した環境下での電気伝導測定を行った.この測定には、昨年度構築した回転試料台を設置したヘリウム3-ヘリウム4希釈冷凍機を用いた.これまでの測定から、(1)絶縁相での電気抵抗の温度特性は、シリコン2次元電子系の場合と同様な活性化型であること、(2)2次元面に垂直な磁場に対して、抵抗が増減するが、磁気抵抗の具体的な形状はシリコン2次元電子系の場合と異なること、などが明らかになった.(2)の原因の一つとして、GaAs正孔系では谷の内部自由度がないことが考えられる.また、磁気抵抗に小さな不連続変化が観測されたが、この変化が1次の磁気相転移に対応するものか否かを現在検討中である. Si/SiGeヘテロ構造井戸型ポテンシャルに閉じこめられた、シリコン2次元電子系の金属相に対して、2次元面に平行な磁場を印可してスピン偏極率を制御した環境下での伝導測定を行った.これまでの測定から、(1)スピン偏極により金属相が消失したSi-MOFET試料中シリコン2次元電子系の場合と異なり、スピン偏極状態でも金属的温度依存性が見られること、(2)温度低下に伴う抵抗の減少が急激になるのが、フェルミ温度よりも低い温度領域であること、などが明らかになった.(2)の結果は、最近有力視されているスクリーニングモデルなどでは簡単に説明することはできない.今後、理論面での大きな発展も望まれる.
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