研究概要 |
本年度は、研究計画どおりピコ秒電子パルスを発生させ、ピコ秒電子回折法により強光子場中における分子構造変形の実時間追跡に成功した。成果を以下にまとめる。 (1)フェムト秒パルスレーザー(100fs)を電子銃の陰極表面に照射し、ピコ秒パルス電子線(25kV)を発生させることに成功した。電子線パルスは(5)の数値シミュレーションより約10ピコ秒と見積もられる。 (2)電子回折像の検出器として、イメージインテンシファイアー(75mmφ)検出器を散乱中心軸からはずして設置した。これにより、ピコ秒電子線によるCCl_4あるいはCS_2の電子回折像を、S/Nよく測定することが可能となった。 (3)二硫化炭素(CS_2)を、YAGレーザーによって生成したパルス強光子場下(〜10ns,〜1TW/cm^2)にさらした。そして、そのパルス強光子場下の状態にあるCS_2のピコ秒パルス電子回折像の測定に成功した。 (4)パルス光子場のピークに対して、ピコ秒電子パルスの遅延時間を変化させたところ、回折パターンに明確な変化が見られた。回折像からCS_2の分子構造を決定したところ、S-C-S変角振動の振幅がレーザー場強度の変化に追随して増加し、減少することが明らかとなった。 (5)ピコ秒領域の電子パルス発生の条件を調べるために、電子線発生および伝播の数値シミュレーションを行った。その結果、時間幅100fsのフェムト秒レーザーを用いて電子線を発生させた場合、パルスあたりの電子数を10^3個以下にすれば、電子パルス幅を1ピコ秒以下に抑えられることが示された。
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