研究概要 |
本研究課題では、当該研究期間において研究計画どおりナノ秒およびフェムト秒レーザーを用いた超短パルス電子線を発生させ、強光子場中における分子のダイナミクスの観測を行った。成果を以下にまとめる。 (1)レーザー場強度0.64TW/cm^2(1TW=10^<12>W)のナノ秒強光子場におけるCS_2分子の配向過程を、ナノ秒パルス電子線(時間幅7ns,2×10^5electrons/pulse)を用いて観測した。得られた異方的な2次元電子回折像の解析より得た時空間平均分子配向度<<cos^2θ>>=0.36は、分子の回転温度10KおよびCS_2の分極率を考慮することにより、理論的に説明された。 (2)フェムト秒レーザー(100fs,266nm,10Hz)により生成したピコ秒電子パルス(25kV)は、パルスあたりの電子数が最大10^4個程度であるため、高感度検出が必要であった。そのため、検出器としてイメージインテンシファイアを用い、また、画像検出器として高感度冷却CCDを導入したシステムを構築した。このシステムにより、高感度電子検出が可能となった。 (3)ピコ秒電子パルスを用いて、ナノ秒強レーザー場(10^<12>W/cm^2)において時々刻々変化するCS_2分子の構造変形過程の実時間観測を行った。このことは、電子状態間の強い結合によりドレストポテンシャルが形成されたことを示している。 (4)ピコ秒領域の電子パルス発生の条件を調べるために、電子線発生および伝播の数値シミュレーションを行った。そして、時間幅100fsのフェムト秒レーザーを用いて電子線を発生させた場合、パルスあたりの電子数を10^3個以下にすれば、電子パルス幅を1ピコ秒以下に抑えられることを示した。
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