研究概要 |
本研究で固相担持不斉触媒の開発を行った.担持不斉配位子として多くの不斉反応ですぐれた不斉環境を構築できるBINAPを選択し,その担持法の検討を行った.固相担体にポリスチレンを用いる報告は数例あるものの,無機担体のシリカゲルを固相担体とした例はなく,本研究ではじめてその調製に成功した.用いたシリカゲルは均一細孔径と大きな表面積をもつメソポーラスシリカゲルである細孔径30AのFSM-16と47AのSBA-15である.従来シリカゲル表面への担持は担持化合物末端のアルコキシシリル基とシラノール基の縮合による方法で達成されているが,本研究で,はじめてアリルシリル基とシラノール基の縮合で担持する新たな方法を見出した,この方法を用いると,担持する化合物の精製をシリカゲルカラムなど有機化合物の一般的精製法で行うことが可能となる.実際に,BINAPの6位に末端アリルシリル基を有するBINAP誘導体を合成,単離し,FSMおよびSBAとトルエン中35時間還流した.その後,メタノールおよびベンゼンで十分洗浄の後,乾燥を行いシリカ担持BINAPを得た.BINAP担持量は元素分析によりFMS担持BINAPではO.22mmol/g, SBA担持BINAPではO.089mmol/gと求められた.これらシリカ担持BINAPのパラジウム錯体が触媒する不斉アリル位アルキル化反応について検討した.具体的には,アリル基質として1,3-Diphenylprop-2-eny lAcetate,求核試薬としてDimethyl Malonateを用いて反応を行った結果,相当する不斉アリル位置換体を80%eeで収率よく得た,今後,さらに大きな細孔径を有する種々のメソポーラスシリカゲルヘ担持した固相担持触媒を合成するとともに,未修飾シラノール基を手がかりとした新たな選択性をねらった反応の検討を行う.
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