研究概要 |
固相担持触媒は,回収再利用の有用性から広く研究されている.その中でも,シリカゲル担体は,有機溶媒中で膨潤しないことから最近特に注目されている.しかし,ポリスチレンなどの有機高分子担体にくらべ純度の高い有機官能基化シリカゲルを得るのは難しいとされてきた.その理由は,担持する有機化合物の精製の困難さに基づく.すなわち,シリカゲル表面のシラノール基と有機官能基との間にSi-O-Si結合を形成させるためには担持する有機官能基の末端にアルコキシシリル基などの加水分解に対して不安定な基の導入が必要であり,シリカゲルカラムクロマトグラフィーのような一般的有機化合物精製法を用いて精製できないことに起因する.今回我々は,アルコキシシリル基に代えてアリルシリル基を導入することにより,常温では加水分解に対して不活性であり,トルエン還流下のなどの高温条件でのみ速やかに,シリカゲル表面のシラノール基と反応してSi-O-Si結合を形成できる極めて有用なシリカゲルの有機官能基化を開発した.この新規担持法を用いて,担持不斉配位子として多くの不斉反応ですぐれた不斉環境を構築できるBINAPを種々の長さのスペーサーを介してシリカゲル表面に担持し得られた官能基化シリカゲルと,ロジウム触媒を用いてシクロヘキセノンへの触媒的不斉1,4-付加反応を行った.具体的には遷移金属触媒のプリカーサーとして[Rh(cod)(MeCN)_2]BF_4を選択し,フェニル基の導入では,フェニル源としてPhB(OH)_2およびPhTi(Oi-Pr)_3を用い,それぞれ(43%収率,89%ee),(82%収率,93%ee)で相当する1,4-付加生成物を得た.また,スチリル基の導入では(E)-PhCH=CHSi(OEt)_3を用いて75%収率,89%eeで相当する光学活性シクロヘキセノン1,4付加体を得た.加えて,シリカゲル担持触媒を回収後,同じ反応を行うと53%収率,87%eeで生成物を与え,回収再利用可能であることを示した.
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