遷移金属カルコゲニドクラスターの自在構築と機能解明

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13304052
• 研究機関: 名古屋大学
• 研究代表者: 巽 和行 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授 (10155096)
• 研究分担者: 久家 克明 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 講師(研究機関研究員) ; 大木 靖弘 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10324394) ; 松本 剛 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 助手 (50311717)
• キーワード: カルコゲン / クラスター / イオウ / モリブデン / 鉄 / ゲルマニウム / ルテニウム / ニッケル

研究概要

1)かさ高い2,6-dimesitylphenyl(Dmp)基で保護されたジチアジゲルメタンジチオールを合成し,2モル当量のn-BuLiでリチオ化した後,種々の遷移金属種とのクラスター化を行った。M(dppe)Cl_2(M=Ni,Pd)やNi(PPh_3)_2Br_2との反応から,二つの末端チオラート部位に第10族遷移金属原子が結合したGe_2MS_4クラスターを単離した。一方,Pd(PPh_3)_2Br_2との反応ではホスフィン1分子が解離し,Pdが3つの硫黄原子と結合したGe_2MS_4クラスターが生成した。ジチアジゲルメタンジチオラートと[Ru(benzene)Cl_2]_2から得られる[Dmp_2Ge_2S_4]Ru(benzene)にTfOHを作用させると,Ge_2Ru_2S_4キュバンクラスターが構築され,Mo(CH_3CN)_3(CO)_3を反応させるとオープンキュバン構造をもつクラスター[Dmp_2Ge_2S_4]Ru(benzene)Mo(CO)_3が構築された。
2)以前,(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4キュバンクラスターがLi_2S_2と反応してS_4(2-)が架橋した環状トリスキュバンクラスター[(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4]_3(S_4)_3を与えることを報告した。同様の反応をLi_2S_2で行うと,硫黄単原子S(2-)が架橋した環状トリスキュバンクラスター[(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4]_3(S)_3が得られた。[(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4]_3(S_4)_3ではキュバン内のFe-Fe結合が切断されると同時に,キュバン間にFe-Fe結合が生成する。ところが,新たに合成した[(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4]_3(S)_3ではキュバン間Fe-Fe結合が保持され,3つのFe-(μ-S)-Fe角が大きく異なった歪んだ環状キュバン構造をとる。[(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4]_3(S)_3はS_8と容易に反応して[(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4]_3(S_4)_3に変換され,逆に[(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4]_3(S_4)_3はPPh_3によって脱硫されて[(Cp^*Mo)_2(FeCl)_2S_4]_3(S)_3となる。

研究成果

• [文献書誌] G. -X. Jin, et al.: "Spontaneous Formation of a Diamond-crown Structure of Re_8 Polyselenide and a Cage Structure of Re_3 Polytelluride"J. Am. Chem. Soc.. 123・No4. 735-736 (2001)
• [文献書誌] H. Kawaguchi, et al.: "Synthesis of a Pentamethylcyclopentadienyl Complex of Tungsten with Three Different Chalcogenido (O^<2->,S^<2->,Se^<2->) Ligands"Angew. Chem. Int. Ed.. 40・No7. 1266-1268 (2001)
• [文献書誌] T. Matsumoto, et al.: "1,2,3,4,5,6,7-Hexathia germepanes : Synthesis, Structures and the Ring Contraction to 1,2,3,4,5- tetrathiagermolanes"Chem. Lett.. No1. 60-61 (2001)
• [文献書誌] H. Yu, et al.: "Unique Formation of Two Different W/Ag/S Clusters from the Same Components via a Low Temperature Solid State Reaction and ・・・"Chem. Commun.. No24. 2614-2615 (2001)
• [文献書誌] Y. Sunada, et al.: "Alkynethiolato and Alkyneselenolato Ruthenium Half-sandwich Complexes : Synthesis, Structures, and Reactions with (η^5-C_5H_5)_2Zr"Inorg. Chem.. 40・No27. 7072-7078 (2001)
• [文献書誌] Y. Arikawa, et al.: "Trithiotungsten (VI) Complexes having Phosphine-Thiolate Hybrid Ligands : Synthesis and Cluster Forming Reactions with CuBr, F_2Cl_2 and [Fe(CH_3CN)_6](ClO_4)_2"Inorg. Chem.. 41・No3. 513-520 (2002)