研究課題
基盤研究(A)
本研究では、分子磁性体の特徴である低次元性と強いスピン-格子相互作用をもちあわせた有機ラジカル結晶と、メゾスコピック系物質として特性をもつ金属錯体クラスターを研究対象とし、2つの異なるアプローチから分子メモリーへの展開を目指した。(1)SNラジカルの溶媒和効果と強磁性これまでの研究により、環状チアジルラジカルのひとつであるTTTAが、全く磁気的性質が異なる2相間で相転移し、しかも室温を含む大きなヒステリシスループをもつことを発見している。本研究では、類縁化合物であるBDTAやBBDTAを取り上げ、これらの構造と磁気特性について検討した。BDTAもTTTAによく似た常磁性-反磁性相転移に加え、過冷却と過加熱の両方を見せることが分かった。またBBDTAは、結晶溶媒であるアセトニトリルが配位した場合、2量化して反磁性を示すが、真空下で溶媒分子を除去すると常磁性となり、しかも強磁性的相互作用をもつことが示された。さらに、温度を下げたところT_c=6.7Kで強磁性を示すことが分った。その他、これらの分子間化合物においても、電荷移動相転移など、特異な物性を見出すことができた。(2)高スピン金属クラスター錯体と量子効果Mn12核クラスター[Mn_<12>O_<12>(RCO_2)_<16>(H_2O)_4](Mn12と略記)は、上向きと下向きスピンの状態間にポテンシャル障壁をもち、さらに障壁をトンネル効果によって透過する磁気緩和を見せる。本研究では、Mn1原子をCrに置換したMn11Crを合成してその影響を調べた。構造解析やX線吸収スペクトルによってCrサイトを特定し、磁性との相関を調べたところ、Mn12と非常に近い磁気構造を持つことが分かった。Mn12/Mn11Cr混晶を用いることにより、両者の磁化の個別制御や、トンネル効果にバイアスされた量子磁化トンネリングを見出した。単分子磁石研究に対して極めて化学的なアプローチを行い、この特性に関して、分子論的な解釈を提出した。
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