研究概要 |
1.コプレーナ線路からの高速パルス磁界応答信号測定 パルス磁界印加用のコプレーナ伝送路と強磁性トンネル接合を同一基板上に配置した素子を作製し,パルス磁界に応答するパーマロイ層の磁化の反転信号を観測した.最速の反転時間は500psで,反転信号はLandau-Lifshits-Gilbert(LLG)方程式による計算結果と時間スケールでほぼ一致した.また,更に早い時間スケールの磁化の変動を観測するために,ポンププローブ測定が可能な光学系を構築し,時間分解能:20fs,コプレーナ伝送路の透過信号帯域:2.4GHzを得た.本装置を用いて180x90μm^2の面積のパーマロイ薄膜の磁化の才差運動によるシグナルを測定し,約500psの振動周期を観測した.この周期はLLG方程式による計算結果と良く一致した. 2.素子界面におけるスピン緩和 Cu/Al-oxide/FeNi/Cu積層膜の強磁性共鳴(FMR)スペクトル,ならびに電流検出共鳴(EDMR)スペクトルを測定し,FMRに対応したEDMR信号が観測された.EDMR信号強度はマイクロ波の電力に比例し,印加電流方向に対して符号が反転した.これらの結果は,強磁性体の才差運動に伴うスピンポンピングにより,非磁性体中にスピンが注入されたことによると結論した. 3.ナノサイズ強磁性トンネル接合素子の作製 集束イオンビーム(FIB)のカーボンデポジション機能を利用して,100nmスケールのマスクパターンを作製した.これを用いて,強磁性トンネル接合上に金属薄膜,レジスト,カーボンからなるマスクを作製し,Arイオンエッチングを行った.エッチングの前後でパターン形状はほとんど変わらず,マスクとして良好に機能していることを確認した.
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