研究概要 |
本年度は、本研究の最終日的である撮像管の開発に向け、高濃度窒素添加多結晶CVDダイヤモンドを冷陰極に、光導電性を示すアモルファス・セレン膜を陽極に用いた二極構造光検出器を試作した。この検出器は、アモルファスセレン膜の光導電性変化により冷陰極の引き出し電圧が変化し、放出電流の変調で光を検出する。光検出器に組み込まれた冷陰極の放出電流-電圧特性より、電子を引き出すための閾値電圧が150V前後と低いこと、ならびに、10-5Torrの低真空において安定した電子放出が行われていることが確認された。また、パルス光に対して光検出器が長時間にわたり安定した応答をしていることが明らかになったが,二極構造の検出器ではその応答の時定数が1.4sと遅いことが確認された.この応答速度の遅さは,当初,冷陰極として用いた高濃度窒素添加多結晶CVDダイヤモンドの持つ容量成分に起因したものと推測されたため,異なった膜厚を持つダイヤモンド薄膜を陰極として使用し,光検出器を作製したところ,応答速度には大きな違いが観測できなかった.これより,光検出器の応答性の遅さは,冷陰極の引き出し電圧を独立に制御できない二極構造に起因すると推測され,二極構造にメッシュグリッドを引き出し電極として加えた三極構造光検出器を作製したところ,応答速度が二極構造のものと比較し1/1000秒程度まで速くなることが確認された. この結果より、高濃度窒素添加CVDダイヤモンドを冷陰極に用いることで,従来の撮像管に比較し,低電圧駆動、低真空動作、長寿命の特徴を有するような撮像デバイスの可能性が示唆された。一方、本年度までに行われてきた光検出器の作製および評価実験より,これまで撮像管のターゲットとしてしばしば用いられてきたアモルファス・セレンをベースにした陽極素材にも経年変化などの問題があることが少しずつ明かになり,来年度以降はアモルファス・セレンをベースにしたターゲット用材料の作製と評価も,本研究課題の一環として行うことを予定している.
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