研究概要 |
本研究ではディスクレーザの極限的な低しきい値を目指し,直径3μm以下のGaInAsPディスクを作製し,光励起により評価した.その結果,特別の放熱構造を持たないディスクにおいて初めて室温連続動作が得られ,しかもしきい値は30μWと低かった.ディスク直径を小さくすると回折損失により発振性能が劣化する.この限界を打破するため,新たにマイクロギア構造を考案した.これは円形ディスクの周りに回折格子を刻む構造である.レーザ発振モードの定在波は電界と磁界の位相がずれている.そして空気中への電界の過剰なしみ出しが,回折損失の原因である.マイクロギアでは,回折格子の突起部分に電界の位相を合わせることでこのしみ出しを抑制し,より小さなディスクでも回折損失を抑制できる.具体的に構造を作製し,光励起により評価した結果,直径2.7μmの素子において室温連続動作が得られ,しきい値17μWを記録した.この値は現時点でGaInAsPレーザの最低記録である.電流注入素子については,大規模集積化の基礎技術としてディスクをBCBポリマーで埋め込み,電極パッドを集積化した.そして直径8μmという比較的大きな素子にもかかわらず,埋め込み前後でほとんど変化がないしきい値0.4mAでの発振を得た.また連続電流に対する共振波長の長波長化から,熱抵抗が約半分に低減されたことを確認した.さらにポリマーの負の屈折率温度係数の効果により,素子内部の温度が変化しても発振波長が変化しないアサーマル効果が含まれていることを突き止めた.そして完全に波長が温度に依存しなくなる状態はディスクを100nm以下にまで薄膜化することで可能になることを予測した.
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