研究概要 |
本年度は,昨年度,発明したマイクロディスク構造の一種,すなわちマイクロギア構造の微小化を進め,直径約2μmのGaInAsPの素子において室温連続動作を実現した.光励起による発振しきい値は、11μWであり,これは昨年度に記録したGaInAsPレーザの最低記録を更新しただけでなく,1995年にGaAs系面発光レーザにおいて実現されたあらゆるレーザにおける低しきい値記録に並ぶ記録である.さらにこの結果をもとに,3次元時間領域有限差分モード計算とレート方程式を用いて発振しきい値低減のメカニズムを明らかにし,最適なギアの深さが100nm程度であることを見いだした.またマイクロディスクでは,微小共振器によって自然放出寿命が短縮されるパーセル効果が期待されてきた.本年度,位相差検出発光寿命測定法によりマイクロディスクのキャリア寿命を測定した.その結果,キャリア緩和の約半分を非発光成分が占めること,自然放出寿命が通常のウエハの場合よりもおよそ1/6に短縮されていることを見いだした.レート方程式解析により実験結果を分析した結果,パーセル効果の大きさを表す係数6を評価した.この係数が室温で評価されたのは初めてである.また複数のディスクを結合させたフォトニック分子構造の作製,実証に成功した.モードの振る舞いを観測した結果,結合に起因すると思われるモード分裂と反交差特性が観測され,理論結果ともよく一致した.また結合状態にあるディスクを部分励起したとき,特異なモード特性が表れた.これは,今後,この種の構造を機能素子に発展させる上で重要な成果と考えられる.
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