研究概要 |
昨年度までに半導体レーザで世界最低となる室温発振しきい値14μWと極限微小レーザに特有な自然放出の高速化(パーセル効果)を実証し,さらに大規模集積化の基礎研究として複数個のディスクを集積化したフォトニック分子を試作した。本年度は特にフォトニック分子の研究を進めた。具体的には2〜9個といった多数個の集積ディスクから成るフォトニック分子に対して室温連続発振を実現し,さらに時間領域有限差分計算によく一致するモード分裂を観測した。昨年度,実証が不十分であった反交差特性とディスク間距離に対する指数関数的な分裂増大が明確に示され,予想通りのモード結合が確認された。さらにディスク個数や配列を変えたときのミニバンドの形成が観測され,化学分子の電子準位の分裂との類似性を議論することができた。またこのような集積ディスクの機能化の一例として,本年は双安定動作の実証に取り組んだ。結合共振器では利得・吸収とそれに伴う屈折率の非線形性から,双安定や結合モードスイッチングが得られると予測し,まずレート方程式解析からその予測を確かめた。また製作した素子に対して不均一な光励起を試した結果,実際に明確な双安定とモードスイッチングが確認された。双安定が起こる実効しきい値電力は300μWであり,半導体レーザを利用した他のあらゆる双安定素子比べても極めて低い。すなわちこれを大規模集積化して機能回路を構成するための重要な成果が得られたと考える。
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