研究概要 |
研究初年度である本年度は,高分子材料の電気的・光学的・機械的特性に関しての基礎データを得るための実験を中心に行い,将来の集積デバイスへの応用可能性を示した。以下各要素に関しての研究成果を述べる。 高分子材料の電気的特性に関しては,PETフィルム基板上に,強い疎水性をもつフッ化物材料をパターニングして親水.疎水性領域を選択的に構成し,これによって導電性高分子の形状を制御して微小電極として加工する技術を開発し,加工できる電極の最小幅や,抵抗率などの測定を行った。 光学的特性に関しては,前出の導電性高分子パターニング技術を用いることによって電気的に微小液滴の位置を制御し,光線方向を制御するマイクロレンズとして応用することが可能であることを示した。光源として高分子有機EL素子を用いた微小画像表示システムなどへの応用が可能である。また,シリコンゴムを材料として用いることによって柔軟で変形可能なマイクロ光学素子アレイを構成した。その際,構造内部にかかる応力の分布と複屈折との間に線形な関係があることを実験によって確認し,有限要素法による応力解析によって材料内部の複屈折を評価できることを示した。 機械的特性に関しては,シリコンゴムを構造として,荷重方向を変換する微小な突起構造のアレイを製作し,高分子圧電(PVDF)フィルムと組み合わせて触覚センサを構成した。高分子圧電フィルムは本来垂直方向の荷重に対して応答する高分子材料であるが,ここで試作したシリコンゴムの構造によって,せん断荷重を垂直荷重に変換し,さまざまな荷重情報を得られるセンサを構成することができた。有限要素法を用いれば,微小突起の変形を予測することが容易であるため,様々な特性を持った触覚センサに応用が可能である。
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