研究概要 |
薄型で柔軟なMEMSシステムの実現を目指し,有機材料を用いたトランジスタによる視覚システムの構成を行った.試作したトランジスタは,ポリイミドフィルム上にドレイン,ソース,ゲートの電極をパターニングした後,有機材料ペンタセンを蒸着したものである.ゲート部に光が当たることによってトランジスタの電気特性が変わるため,光センサとして用いることができる上,トランジスタとしての特性を利用して,アレイ状に配列したセンサから,順次信号を読み出すことも可能となった.このトランジスタアレイにPDMSで製作したマイクロレンズアレイを重ねることで,薄型・柔軟な視覚システムを構成した. この視覚システムの応用可能性を探るため,シリコンフォトダイオードとレンズからなるラージスケールの実験システムを作り,位置検出センサとしての特性の評価を行った.このラージスケールセンサは,フィルム基板上にひずみゲージアレイが集積されており,フィルムを曲面に貼り付けた場合,ひずみゲージの出力から,センサシートの曲率半径を計算することができる.この曲率半径と,得られた光入力から点光源の運動の軌跡を計測することができた.前述の有機トランジスタによって,このシステムと同様の機能をごく小型のシステムで実現できることから,例えば指などに装着して入力デバイスとして用いる応用が期待できる. また,その他,任意の基板上に光源を製作できるプロセスとして,量子ドットを用いた微小光源の研究を行った.微細加工により製作したシリコン電極間に,電圧制御によって量子ドットを集積し,400ナノメートルギャップの発光ダイオードを製作することに成功した.この技術を用いれば,ポリイミドやPDMSなど,柔軟な基板上に発光デバイスを製作することが可能となる.
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