研究概要 |
柔軟な薄膜型の視覚システムに関する前年度の基礎的研究の成果をふまえ,有機材料を用いたトランジスタによる視覚システムの画像取得に関する実験を引き続き行った.ポリイミドフィルム上に集積した有機トランジスタアレイに,シリコンゴムからなるマイクロレンズアレイを粗み合わせ,変形可能な複眼型撮像センサを試作した.このトランジスタは,基板を変形させても,出力信号に大きな影響を与えないため,基板を自在に曲げることによって視野の変わる撮像センサとすることが出来た.有機トランジスタの電流増幅の方法に関しては,従来のような平面型でなく,微小な立構造を用いた縦型のトランジスタの試作に成功した.この方法を用いることで,ディスプレイや撮像装置などの動作効率を向上することが可能と考えられる. 本年度は,高分子材料,有機材料半導体の研究に加え,大面積,低予算での製作を実現できる可能性のある材料として,感光性のたんぱく質である,バクテリオロドプシンを利用したデバイスの研究を行った.静電気によるたんぱく質の電着と配向の制御に加え,基板表面の親水性・疎水性の制御によって,5ミクロン程度の小さい領域にまでたんぱく質をパターニングできることがわかった.このたんぱく質を4×4の領域にパターニングすることにより撮像センサを作ることが出来た. 上記の研究に加えて,ヒューマンインターフェース技術研究の一環として,皮膚のように柔軟で,様々な力の成分を検出することのできる触覚センサを試作した.この触角センサは,センサ部分にはシリコン微小構造からなる歪センサを利用しているが,全体を柔軟なフィルム内に埋め込むことができる.このようなシリコンMEMSデバイスも,微小なチップ構造内に集積することで,柔軟な有機材料システムとの統合が可能である.
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