研究概要 |
痛みの激しい貴重な文化遺産であるレコードやテープに記録された映像や音を再生し,CD, DVD等のディジタルメディアに記録保存するいわゆるディジタルアーカイブ作業が盛んに行われている。これらは多くの場合いずれもアナログのレコードプレーヤやテープレコーダを使って再生した信号をディジタル収録したうえ,信号処理技術により雑音や歪の軽減処理を施しディジタルメディアに記録しているのが現状である。 本研究は先人達が限られた技術環境で実現した蝋管,SPレコードやテープレコーダなどの記録システムにより記録された情報を現在の技術を駆使して傷つけることなく,非接触・非破壊で内容を細大漏らさず読み取り保存・再生する技術を確立するとともに博物館,図書館,学校等で手軽に使用する事のできる精密な複製や専用の再生装置を構築しようというものである。 既に実施した基礎研究により古いレコードやテープに驚くほど質の高い音声や映像が記録されていることが確認されている。本年度は,レーザを用いることにより現物に触れることなく破損した蝋管型レコードの各破片に対して全面読み出しを行い,その形状情報より各破片の接する点,全体形状を予測し,破損したレコードからの音情報の再生を試みた。また表面形状の再現を試みた。レーザーを用いた読み取りでは全表面の三次元読み出しを行い,さらにクラスター分析を用いることにより音溝を確定した。実際の針では溝の底部分の読み取りは不可能であるが,本手法では音溝の谷部分を含めて溝壁面全体を加重読み取りすることにより高音質な再生音を得ることが可能である。 さらに,相関を用いることによりそれぞれの破片の位置を決定し,一般化調和解析を用いて欠落部分の補間を行った。その結果,違和感のない再生音が得られた。同様の手法で蝋管表面上の傷などに対しても補間が行える処理方法を確立した。
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