研究概要 |
地球環境、エネルギー・資源問題を背景として、建築分野においては建設材料、部材の長寿命化・耐久性向上が強く求められている。建築材料の大部分は多孔質であり、従って材料の耐久性向上には多孔質建築材料内での水分および拡散物質の移動と蓄積を適切な精度で予測・評価することが重要である。 本研究では、建築多孔質材料中に多成分・多相の媒質が存在し拡散および化学反応がある場合の考え方を明確にし、簡易なモデルの提案を行うとともに、拡散係数とポテンシャルの測定と適切な測定装置の開発を自的とする。本年度は、以下の課題に関して検討を行った。 (1)コンクリート供試体の透水係数の測定を行い,高さ20cm程度の供試体においても上下方向の位置の違いにより,透水係数の値が数倍異なることを明らかにした.これは,実際のRC構造建物において数メートルの高さの壁体が作られることを考慮すると,非常に大きな影響を及ぼす可能性があることを意味している. (2)化学反応が生じる場合の,多孔質材料内での多成分系の拡散過程および平衡関係に関する理論的な扱いに基づき,(1)の実験に関する解析を行い,比較的良好な一致を得ることができた.酸性雨の影響については,その乾燥過程の状況が結果に大きな影響を及ぼすことを明らかにした. (3)非破壊含水率測定装置としてのγ線装置を製作し,それにおける測定誤差に関する理論的な評価を行った. (4)土壌における蓄熱過程の解析を目的として,土壌層の上下,水平方向における透水係数の測定を行い,水分流の大きな位置においては細粒分の流出により透水係数が大きくなり,それが透水係数の増加を引き起こすというフィードバック機構が働くこと可能性を示した.
|