研究課題/領域番号 |
13305044
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
長谷川 雅幸 東北大学, 金属材料研究所, 教授 (80005975)
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研究分担者 |
湯蓋 邦夫 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (00302208)
唐 政 東北大学, 金属材料研究所, 助手 (80271972)
永井 康介 東北大学, 金属材料研究所, 助教授 (10302209)
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キーワード | 陽電子消滅法 / 自己探索プローブ / 運動量分布 / フェルミ面 / 陽電子量子ドット閉じ込め |
研究概要 |
熱時効、照射やイオン注入によって生ずる(サブ)ナノサイズ粒子(以下ナノ粒子と略記)は、その材料の物理的・機械的性質に大きな影響を与える。従って材料中のこのような埋め込み粒子の形成過程とその原子・電子構造を解明することは極めて重要である。本研究では、最近我々が世界に先駆けて開発しつつある最新の陽電子消滅実験および理論計算を組み合わせる方法を発展・応用し、ナノ粒子の検出とその原子的・電子的構造を解明することを目的とする。 陽電子は材料中を動き回り、高い陽電子親和力を持つ元素からなるか、あるいは空孔を含む埋め込みナノ粒子を自ら探索(自己探索性)し、そこに閉じ込められ(量子ドット閉じ込め)、そのナノ粒子の電子的・原子的情報を与えてくれる。 まず、今年度は、Fe中のCuナノ微結晶を調べた。バルクのCuはfcc構造であるが、bcc構造のFe中のCuナノ析出物はbcc構造を持つため、フェルミ面の構造はバルクと大きく異なるはずである。作製した試料の陽電子消滅2光子2次元角相関(2D・ACAR)を測定した結果、Cuナノ微結晶のフェルミ面は、bcc構造のBrillouinゾーンの形状を反映して、12個のN点にネックを持つことがわかった。バルクCuのフェルミ面は、fccc構造のBrillouinゾーンの8つのL点にネックを持つことが知られているが、それとは大きく異なるフェルミ面構造を持つことが明らかになった。陽電子消滅実験と平行して、bcc構造のCuのフェルミ面をFLAPW法による第一原理計算も行った。その結果は、2D-ACAR測定による実験結果とよく一致した。 次に、Al-Cu-Mg中の空孔-溶質原子複合体の形成とその時効析出初期過程の解明を、新たに製作した同時計数ドップラーブロードニング装置を用いて行った。その結果、焼き入れ空孔がMg原子と複合体を形成すること、それが短時問の時効でCu原子を伴いながら動きて転位に吸収されること、それによって転位がピン留めされて初期時効硬化に寄与すること等が明らかになった。
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