研究概要 |
本研究は,ペロブスカイト関連酸化物の酸素不定比量に関して,形態効果,サイズ効果の現れる原因を特定し,これらを取り入れた欠陥平衡論を構築することを目的とする.昨年度までに,固体酸化物イオン導電体基板上に製膜した混合導電性薄膜の評価法を確立し,モデル物質としての(La,Sr)CoO_3膜の酸素不定比量の組成/粒子径依存性を明らかにした。本年度は,薄摸の酸素不定比量への基板の影響,ナノ粒子焼結体でのサイズ効果計測法の確立,量子化学計算による薄膜化効果評価法探求の準備等を目指して研究を進め次のような進展と成果を得た. (1)レーザーアブレーション装置の高機能化 多様な酸化物薄膜を様々な条件下で任意に成膜することを可能にするため,出力300ミリジュール程度の高出力エキシマレーザーを他研究室から移管し,本格的な装置を再構築した。単結晶安定化ジルコニア表面に50nm程度の酸化セリウムと700nm程度のモデル物質である(La,Sr)CoO3薄膜を重ねてエピタキシャル成長させることなどに成功した.このエピタキシャル成長した酸化物の酸素不定比量は昨年度計測した多結晶酸化セリウム上の膜と同様に単独結晶より小さな値をとることを明らかにした. (2)ナノ粒子焼結体の作製と酸素不定非性の測定 ナノ粒子の物性や酸素不定性を測定するためには微細な結晶粒を維持したまま緻密な成型体にする必要がある.模擬物質として既に先行研究者がいる酸化セリウムを用い,800℃程度での低温焼結とスパークプラズマ焼結とを試みた.その結果,何れでも数十ナノメートルの粒径を維持した微粒子成型体を得ることに成功した. (3)第一原理計算によるナノ結晶中の酸素の安定性 密度汎関数法CASTEPによる第一原理量子力学計算ソフトウェアーを導入し,酸素欠損量や酸素欠損の存在位置と酸素の安定性との関連を計算予測するための準備計算を開始した.
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