研究概要 |
本研究では,ペロブスカイト関連酸化物の酸素不定比量に関して,形態効果,サイズ効果の現れる原因を特定し,これらを取り入れた欠陥平衡論を構築することを目的としている。昨年度までに,(La,Sr)CoO_3薄膜の粒子径依存性について検討を行ってきたが,酸素欠陥生成エンタルピーのバルク試料からの変化幅は,どの試料でも同程度であり,明確な粒子径依存性はみられなかった。そこで,欠陥平衡に影響しているのはむしろ基板との相互作用であると考え,本年度は異なる基板上での(La,Sr)CoO_3薄膜の挙動を比較した。また,サイズ効果がすでに報告されているCeO_2系酸化物については30nm程度の粒径をもつ試料の作製に成功していたので,本年度は熱天秤および導電率測定による欠陥平衡の検討を行った。さらに,異なる種類のナノ粒子を混合した場合の効果を検証するために, Pt/SrZrO_3系の,ヘテロナノ粒子の作製を試みた。 (1)(La,Sr)CoO_3薄膜 La_<0.6>Sr_<0.4>CoO_3薄膜をレーザーアブレーション法によって(Ce,Gd)O_2基板,YSZ基板,および(Ce,Gd)O_2膜バッファ層を施したYSZ基板上に作製しインピーダンス法によってその酸素不定比量を比較した。この結果,いずれの試料においても,酸素欠陥量の変化は実験誤差の範囲内で同等であった。今後は膜に機械的応力を印加して欠陥平衡の変化を検討する予定である。 (2)CeO_2微粒子の酸素不定比量 約30nm程度の粒子径をもつCeO_2焼結体の導電率の酸素分圧,温度に対する依存性を測定し,酸素欠陥量を見積もり,100nm以上の粒径をもつ試料との比較を行ったが,これらの間に明確な違いは認められなかった。さらに微粒子CeO_2について微重量熱天秤の測定を行ったが,ここから得られる酸素不定比量にもバルク試料との違いは現れなかった。 (3)ヘテロナノ粒子の作製 SrZrO_3とPtとのナノレベルでの混合粉体を作製することを作製することを目指し,塩化白金酸を原料とした湿式合成法を試みた。現在のところ,白金系の酸化物が生成するなどの原因で目的の材料は得られてない。還元処理などの工夫が必要であることがわかった。
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