研究概要 |
本研究は,ペロブスカイト型酸化物に関して,形態効果,サイズ効果を取り入れた欠陥化学を構築することを目指し,以下の研究を行った。 1.薄膜化の効果を調べる目的で,(Ce, Gd)O_2基板上に(La, Sr)CoO_3薄膜を形成し,その酸素不定比性を計測した。通常,酸素空孔濃度は,熱天秤などで測定されるが,薄膜では試料の量が少く,十分な感度が得られない。そこで,この物質が酸素イオン/電子混合導電性を有することを利用し,電気化学的な応答から空孔濃度を見積もる手法を開発した。具体的には,基板の(Ce, Gd)O2を固体電解質として用い,電気化学インピーダンスを測定した。電極反応が表面反応律速である場合,ある周波数以上の交流は,薄膜内への酸素イオンの出入りの量に対応する。したがって,インピーダンスの周波数応答から酸素空孔濃度が酸素ポテンシャルに関しての微分量として求められる。この手法を用いて,Sr添加量の異なる(La, Sr)CoO3膜について評価し,報告されているバルク試料のデータに比べて,酸素空孔生成のエシタルピーが増大し,空孔が生成しにくくなることを見いだした。この原因について明らかにするために,粒子サイズの効果,基板の効果を検証したが,これらはともに空孔生成エンタルピーに影響を与えなかった。 2.ペロブスカイト型酸化物の微細構造と酸素不定比性に関わるいくつかの間題を検証した。LaMnO3については,酸素不定比性がカチオンの欠陥生成を伴い,微細構造を変化させることを見いだした。n型SrTiO_3については,速度論的にカチオン欠陥の生成が表面層に限定され,これによって整流性などの機能が発現することを明らかにした。また,極微細領域の組成揺らぎがマクロな酸素不定比性に影響する(La, Ca)(Cr, Al)O_3固溶体系をとりあげ,これを定量的に記述する手法を提案した。
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