原子・分子及びナノレベルで構造制御したセラミックス材料の開発と新機能の付与

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13305049
• 研究機関: 大阪大学
• 研究代表者: 新原 晧一 大阪大学, 産業科学研究所, 教授 (40005939)
• 研究分担者: 楠瀬 尚史 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (60314423) ; 山口 俊郎 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (40167698) ; 関野 徹 大阪大学, 産業科学研究所, 助教授 (20226658) ; 中山 忠親 大阪大学, 産業科学研究所, 助手 (10324849)
• キーワード: 自発的超構造 / ゾルゲル法 / 自己組織化複合結晶 / 高次構造制御 / 配向膜 / 熱電変換材料 / 3次元ナノネットワーク / 構造用セラミックス

研究概要

昨年度までに、自発的超構造(自然人工格子)を持つ酸化物であるLi-Nb-Ti-O系材料のゾルゲル法による作製プロセス検討と焼結体の作製を行い、その構造解析や誘電的性質の解明を行った。本年度は最適化されたゾルゲル法を用いて、超構造が基板に対して選択的に配向したエピタキシャル薄膜の作製と評価を行った。この結果、自然超構造が単結晶基板に対して配向した厚さ100〜200nmの薄膜をゾルゲルスピンコート法と雰囲気加熱法を用いることで形成可能なことを電子顕微鏡などで確認した。また、本超構造を持つ材料を帯溶融法で融解冷却することで、原子レベルでは超構造を持ち、ミクロサイズの柱状結晶が自発的に配列された自己組織化複合結晶が作製できることを見いだした。本材料は2相からなり、結晶幾何学的な方位関係を持っていること、自己組織化がミリメートルレベルまで生じていること、材料が誘電的性質を持つ光学結晶であることなどから、自己組織化フォトニック結晶などとして光デバイスなどへ期待されるものであることを明らかとした。
また、この様な超構造に由来した機能を更に活かすために、良好な電気伝導性と熱起電力、低熱伝導性を持つために熱電変換材料として期待されるアルカリ金属と遷移金属からなるNa-Co-O系などの複合酸化物に同様な原子分子レベルでの構造・機能制御手法を展開することで原子レベルからミクロレベルまでの階層で異方性構造制御を可能とし、電気伝導度や熱起電力を改善しつつ、相反する熱伝導率を低下させることに成功した。これら材料の焼結体の熱電変換効率は、同様の単結晶と比較するとまだ不十分なものの、原子レベルからミクロレベルまで高い層構造制御が機能改善に有効であることを明らかにしたものであり、次年度以降の展開が期待された。
一方、セラミックス焼結体の粒界3次元ナノネットワーク構造を用いることで、絶縁性の構造用セラミックスに任意の電気伝導度を付与しつつ、その力学的性質を保持可能なことを明らかにし、セラミックスの新しい可能性を提示した。

研究成果

• [文献書誌] Chang Yeoul Kim, Tohru Sekino, Koichi Niihara: "Fabrication of BaTiO3/Cu composites by reducing Cu2O under nitrogen atmosphere."Materials Research Innovation. 5・5. 201-207 (2002)
• [文献書誌] C.Y.Kim, T.Sekino, T.Adachi, Y.Y., K.Niihara: "Microstructural observations of Cu2O-added BaTiO3 sintered under N2 flow"J.Ceram.Soc.Japan. 110・7. 622-626 (2002)
• [文献書誌] 楠瀬尚史, 関野 徹, 新原皓一: "高次機能調和セラミックス系ナノコンポジットの創製と応用展開"マテリアルインテグレーション. 15・10. 40-48 (2002)
• [文献書誌] Chang Yeoul Kim, Tohru Sekino, Koichi Niihara: "Synthesis of (Bi1/2Na1/2)TiO3 nano-sized powders by solution-sol-gel process"J.Am.Ceram.Soc.. (in press). (2003)
• [文献書誌] Y.Yamamoto, T.Sekino, H.Hayashi, T.Nakayama, T.Kusunose, K.Niihara: "Synthesis and structure of Preferred-oriented Li2O-Nb2O5-TiO2 Thin Film with Superstructure"Materials Letters. (in press). (2003)