水素は爆発濃度範囲が広く、最小発火エネルギーが低いため、クリーンなエネルギー源として使用するためには、水素の漏洩を検知するデバイスの開発が不可欠である、光検知式水素センサーは、室温における高い性能と安全性のために、最も実用性の高い候補の一つである。このセンサーは、カラス基板や光ファイバーの端面に成膜したPdなどの触媒金属の薄膜により構成され、水素化に伴う薄膜の光学特性変化を水素の検知に用いている。本研究では、水素ガスセンサの感度、応答・回復特性、耐久性を向上させるために、光検知式水素ガスセンサの作動メカニズムに関する研究を行い、以下の知見を得た。 (1)Pd薄膜をパターン化することにより、耐久性が高く、感度の大きな水素ガスセンサが得られることがわかった。パターン化させたPd薄膜は、繰り返し水素を検知することで感度が増加するという新しい現象を見出した (2)ポリエチレンテレフタレート(PET)とポリカーボネート(PC)基板上に成膜したPd薄膜は、ガラス基板上に成膜したものに比べて、安定した感度を示した。Pd/PET試料の回復時間は、水素検知回数の増加に伴い長くなった。これに対し、Pd/PC試料では安定した繰り返し特性を示した。これらの結果から、基板材料が検知特性に大きく影響することがわかった。 (3)Pd/Y二層薄膜は、Pd薄膜よりも高い感度を有することがわかった。また、回復時間は、Pdの膜厚を制御することにより、制御可能であることがわかった。 (4)Pd/Mg薄膜は、Pd/Y薄膜を上回る感度を示した。分光エリプソメトリーによる測定の結果、水素の吸収に伴いPd/Mg薄膜の誘電関数が大きく変化することがわかった。この変化は、自由電子密度の減少と電子分極の出現の両者が寄与していることが示唆された。 (5)ステアリン酸(SA)をバッファー層として用いたPd/SA/ガラス試料の耐久性と感度を調査した。その結果、格段に高い感度と耐久性を示すセンサーが得られた。
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