研究分担者 |
堤 治 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (00313370)
金澤 昭彦 山形大学, 工学部, 助教授 (80272714)
塩野 毅 東京工業大学, 資源化学研究所, 助教授 (10170846)
宍戸 厚 東京工業大学, 資源化学研究所, 助手 (40334536)
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研究概要 |
フォトクロミック分子であるアゾベンゼンを導入した高分子液晶は,レーザーパルスの照射により液晶相-等方相相転移がマイクロ秒オーダーで誘起されることが報告されている。そこで本研究では,高分子アゾベンゼン液晶のもつ高速光応答性,高屈折率変調度,高分子物性を生かして,ホログラフィーへの展開を図った。ホログラムは光の干渉によって形成される回折格子中に光信号の強度情報と位相情報を同時に合わせもつため,二次元および三次元(立体)画像情報の高密度多重記録・再生が可能である。本研究は,ホログラムの書き込み・書き換えを高速に行うことが可能,かつ現像などの後処理を必要としない高密度ホログラム記録材料を開発することを目標とした。本年度は,特に書き込み速度の向上を目指し,高速にトランス【double arrow】シス異性化が誘起できかつ分子の運動性が高い高分子液晶を開発し,ホログラム形成挙動について詳細な検討を行った。 分子の運動性を向上するには系の粘性を下げればよい。そこで,骨格として粘性の低い液晶相を示すことが知られているトランを選択し,光応答分子であるアゾベンゼンとのコポリマーを調製した。本研究では,ホログラムの消去プロセスを高速化するために,アゾベンゼンのシス【double arrow】トランス異性化反応が容易に起こるドナー・アクセプター型アゾベンゼンを導入した。調製したポリマーのフィルム(500nm厚)に二光束のコヒーレント光を照射すると,干渉縞の明部でのみ相転移が誘起され,周期的な配向変化(屈折率変化)が起こって,回折格子が形成できることを確認した。形成した回折格子により回折されるプローブ光の強度をモニターして回折効率を実時間測定し,これより回折格子形成過程のダイナミクスについて検討した。その結果,トラン系液晶を用いると高速に回折格子が形成され,ガラス転移点以下では誘起された回折格子は安定に保持されるが,ガラス転移点以上では速やかに消去できることを見いだした。この結果を,一般的なシアノビフェニル骨格を有する高分子液晶と比較すると,応答速度はトラン系高分子液晶の方が10倍程度優れていた。また,このトラン系高分子液晶を用いた場合,回折効率は約30%であり,この系における回折効率の理論的最大値(34%)に近い値が達成できた。
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