研究概要 |
1.パンコムギ低温誘導性遺伝子群の単離と構造解析: 低温順化した秋播き性品種Mironovskaya808(M808)由来のcDNAライブラリーおよびESTライブラリーから11種類の低温誘導性cDNA(Wltr10,Wdhn13,Wcor14,Wcor15,Wrab15,Wrab17,Wrab18,Wrab19,Wcor726,Wdreb2 Wcbf)を単離し構造を解析した。Wcor15とWrab17については、プロモーターを含むゲノム配列を単離した。さらに、ミトコンドリアオールタナティブ酸化酵素をコードするAOX遺伝子(Waox1a, Waox1c)のcDNAとゲノムクローンを単離した。 2.低温誘導性遺伝子群の発現解析と品種耐性試験:単離した遺伝子群の低温・ABA・乾燥・塩などのストレスに対する応答性をcDNAと抗体を用いて解析し、M808とCS間で比較した。さらに転写産物の蓄積過程と凍結耐性の獲得過程を比較解析した。 3.CORタンパク質の葉緑体輸送とプロモーターの解析:Wcor14とWcor15について、GFPキメラ遺伝子を構築しムラサキツユクサの表皮細胞に導入した一過性発現からタンパク質の葉緑体輸送を明らかにした。Wcor15については、35Sプロモーターとゲノムプロモーターを持つ形質転換タバコを作出し、コムギと同様の発現パターンを確認した。Wdhn13のプロモーター配列を単離し、Wcor15と同様に、これがCRT/DRE配列を持つことを明らかにした。 4.転写因子の単離と構造解析:WcbfとWdrebのcDNA配列を単離し、コムギ構成ゲノム間で構造を比較した。 5.cDNA-AFLP解析:低温処理、無処理の植物体から得たmRNAを対象にcDNA-AFLP解析を行い、シロイヌナズナと比較してコムギにおける低温応答性経路の発達を示唆する結果を得た。
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