研究概要 |
バチラスチューリンゲンシスの生産する殺虫蛋白は,昆虫中腸内で活性化トキシンとなり中腸上皮細胞のアピカル膜に結合すると考えられている。アピカル膜上にあるアミノペプチデース(APN),カドヘリン様蛋白(CadP)などがトキシン受容体と提案されている。我々は中腸上皮細胞からアピカル膜を調整し膜蛋白を可溶化し,リガンドブロット解析,親和性カラム解析によってそれら蛋白とトキシンとの結合を調査した。その結果,245kDa(245P), 97kDa(97P), 86kDa(86P)の三つの蛋白がトキシンと結合する事が示された。従来カドヘリン様蛋白は170kDaあるいは200kDaと主張されていて,245Pは明らかにそれと異なり、しかもホモダイマーからなる500kDa程のサブユニット構造をとるものと示唆された。97PはADNの泳動距離と近い場所にSDS-PAGEで検出されたがAPN活性を持たずヘテロダイマーのサブユニット構造を持つ事が示唆された。86Pはリガンドブロット法では検出出来ず、Cry1Aaトキシンを樹脂に結合させた親和性カラムでのみ検出された。これは,リガンドブロット法では蛋白の一次構造が認識されるのに対し、親和性カラムでは分子型が結合に重要である事を考えると非常に興味が持たれた。245P, 97P, 86Pはいずれも抗アミノペプチデース抗体で認識されない。しかし97PはpNP-Leu分解活性を示し我々の調整した抗APN抗体が認識しない極めて相同性の低い他のアミノペプチデースである可能性が示唆された。245P, 86Pはアミノペプチデース活性を示さずADNではないであろう。3種の蛋白ともConA, DNAで認識され、これらはN-結合する糖を持ち、しかもバイセテティングのGlcNAcを含んでいると類推された。
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