研究概要 |
B.thuringiensis Cryトキシンは昆虫中腸上皮細胞の受容体蛋白と相互作用し膜に小孔を形成し上皮細胞を破壊すると考えられている。アピカル膜上にあるCry1Aトキシン結合性蛋白を2つ精製した。一つは90kDa蛋白でもう一つは230kDa蛋白である。90kDa蛋白はアミノペプチデース活性を持ち4種類のアミノペプチデース抗体を用いた実験でグループ4に分類された。しかしN-末端配列はこの蛋白が新規なアミノペプチデースであることを示している。分子量はゲル濾過で18万でSDS-PAGEでは90kDaであった。さらにネーティブPAGEでは1本のバンドを示すので90kDa蛋白はホモ2量体を形成していると考えられた。結合はCly1Ac特異的でCry1Ab,Cry1Aaに結合しない。Cry1Acとの結合はGa1NAcで阻害され広く認められているようにGlaNAcが結合に関与すると予想された。このタンパクは糖タンパクでレクチン染色実験ではN-結合、O-結合の糖鎖を持つ事が示された。但しConA,LCA,SBAに特異的に結合することから、複合型糖鎖Manα1-6(Manα1-3)Manα1-6(Galβ1-4GlcNAcα1-2Manα1-3)Manβ1-4GlcNAcβ1-4(Fucα1-6)GlcNAc-Asnが最も有力である。またO-結合型としては、GalNAcα1-3Galβ1-3GalNAc-Serが考えられた。一方興味あることに230kDa蛋白はアミノペプチデース活性を示さず、当然に抗アミノペプチデース抗体には陰性であった。また抗カドヘリン抗体にも陰性でありその蛋白の性質の解明が待たれる。230kDa蛋白はCry1Aa、Cry1Ac及びCry1Abとも結合するが、Cry1Abに対する結合は非常に弱い。90kDa蛋白と同様に糖タンパクと考えられるが、詳細な性質は精製後に明らかに出来る。ゲル濾過では700万ほどの分画サイズに流出し、3量体を形成していると推定された。
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