研究概要 |
(1)エリシターシグナル伝達経路の解明 エリシター又はジャスモン酸メチル処理後のCupressus lusitanica培養細胞における、過酸化水素、リポキシゲナーゼ,cAMP、等の経時変化を追跡し,各種酵素阻害剤及びイオンチャンネル阻害剤によるヒノキチオール生成への影響から,エリシターのレセプターからヒノキチオール生産酵素系までのシグナル伝達にG-proteinやリポキシゲナーゼ及ぴプロテインキナーゼの活性化が関与していること,またcAMPやCa2+がメッセンジャーとして機能していること等を明らかにした。 (2)生物活性モノテルペンの検索及び培養細胞のモノテルペン生産の消長追跡 C. lusitanica培養細胞を生育培地及びヒノキチオール生産培地で培養し,ヒノキチオール以外のモノテルペンが生成するかを調べた。その結果,myrcene, limonene, terpinolene, sabinene, β-ocimene, methy 4-hydroxyphellandrate, 4-terpineol, α-terpineol, (1S,2S,6S)-(+)-1,6-epoxy-4(8)-p-menthene-2-olのde novo合成が確認された。興味深いことに,ヒノキチオール生成量は培養4日目まで増加し4日目から8日目にかけて減少するのに対し,これらモノテルペンは培養8日目から顕著に増加した。さらに、ヒノキチオールは細胞中にある程度蓄積されるがそれらのモノテルペン類は細胞外に蓄積された。これらのモノテルペンもヒノキチオール同様エリシター添加によって生合成が開始されるが,その制御機構は互いに独立であろうと推測される。 (3)ヒノキチオール合成遺伝子の検索 過去のテルペンシンターゼのシーケンスデータとのホモロジーをベースに,全長の遺伝子をとり,他のシンターゼと比較する試みには成功していない。したがって,cDNAを大腸菌に導入して,発現した酵素の諸性質を調べる段階に到達できなかった。この点は次年度への課題としたい。
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