研究概要 |
I.ストレス-脳-下垂体-間腎系の分子機構の解明 飼育下で成熟するメダカと成熟しないウナギの脳より副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン(CRH)およびウロテンシンI(UI)をクローニングし、脳における発現部位を同定した。メダカCRHは脳の前部、中部、後部で発現し、UIは前部、中部で主に発現していた。メダカの主なCRH産生ニューロンはNPPvとnucleus ventromedialis thalamiの間に認められ、ウナギでは旁脳室器官において顕著な発現が認められた。ウナギUIの発現は旁脳室器官の腹側部に認められた。淡水中のテラピアにストレスホルモンであるコルチゾルを投与したところ、血中IGF結合タンパク量は2時間以内に増加し、血中IGF-I量と肝臓IGFmRNA量は24、48時間後に減少した。この結果、ストレスにより、血中IGF結合タンパクの急速な増加と、その後の肝臓のIGF-I遺伝子の発現抑制が起こり、血中IGF-I量が低下することがストレスによる体成長抑制作用の要因であると示唆された。 II.ストレスによる生殖系の抑制機構の解明 ウナギ脳内には3タイプのmGnRHmRNAが存在することが判明した。テストステロン投与に伴うこれらのmRNAをリアルタイム定量PCRで測定したところテストステロン投与により増加するが、対照群では時間の経過とともに減少した。この減少はストレスに起因すると考えられた。飢餓ストレス下にメダカ置くと数日後に産卵を停止したが、この過程におけるCRHとmdGnRHmRNAを定量PCRにより測定したところCRHとmdGnRHmRNAとも減少することが分かった。この結果、飢餓はCRHを介さずに生殖を抑制することが示唆された。 III.ストレスによる免疫系の抑制機構 トラフグの免疫グロブリン類、CD3,CD4,CD8をクローニングし演繹アミノ酸配列を決定した。
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