研究概要 |
本研究では、魚類におけるストレス反応系の分子機構、ストレスによる生殖抑制機構及び免疫抑制機構について研究を進めた。その経過及び概要は下記の通りである。 ウナギとメダカの脳からCRH、ウロテンシン1、ウロコルチン2と3などのCRHファミリー遺伝子をクローニングし、その構造を明らかにした。さらにCRH、ウロテンシン1、ウロコルチン2と3及びアルギニンバソトシン(AVT) mRNAのリアルタイム定量PCR系を確立し、CRH及びAVT遺伝子発現量の日周変化や水流負荷、空気暴露下における両遺伝子の発現量、体部コルチゾル量を測定し、ストレス反応の様相を明らかにした。またメダカCRH受容体cDNA1と2の全長塩基配列を決定し、それぞれの発現が組織特異的であることを明らかにした。 ストレスによる生殖抑制については、ウナギが水槽内で成熟しないのはストレスによりGnRH遺伝子の発現が抑制されるためと考えられた。またメダカを1週間にわたり毎日0,2,4,8,16分の空気暴露を繰り返したところ16分区で頭部を除いた体中のコルチゾル量が増加する事がわかった。そこで毎日16分空気暴露を26日間繰り返したところ、GSIは8日目以降減少し,コルチゾル量も15日目にピークとなった,この結果,空気暴露ストレスにより生殖抑制が起こることが示唆された。 ストレスホルモンであるコルチゾルはニジマスの培養白血球のIgM産生を抑制することが明らかとなった。さらにコルチゾルはコイの培養白血球のアポトーシスを誘導することにより、IgM産生を抑制することが判明した。フグでは、コルチゾルは培養抹消血、脾臓、頭腎リンパ球のアポトーシスを誘導するが、性ホルモンは影響を与えないことが明らかとなった。さらにフグでは、コルチゾルは抹消血、頭腎、脾臓リンパ球のIgMmRNA量を低下させることも明らかとなった。
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