相同性組換えによるセルラーゼ遺伝子の挿入箇所として乳酸脱水素酵素(LDH)遺伝子を選定した。この遺伝子配列情報を得るため以下のようにして単離を試みた。好熱細菌におけるLDHアミノ酸配列の保存領域を基にDegenerateプライマーを設計しPCRで増幅させた。予想されたサイズ(約500bp)の特異的バンドをクローニングしDNAシーケンスを行った結果、LDH遺伝子の断片であることが相同性検索によって示された。この遺伝子の全長を単離するため、適当な部位でDIGラベルのプローブを作製しサザンブロット解析を行った。その結果、約3〜4kbの位置にシグナルが検出され、現在そのバンドに関して解析を行っている。一方、利用可能な他菌種の検討も同時に行った。Clostridium thermocellumはセルロース分解能力が高いもののエタノール生成能力が低い。一酸化炭素によってヒドロゲナーゼを阻害した場合、細胞内での電子の蓄積が生じ、その電子の処理に伴うエタノール生成の増加が期待されたが、この条件下でC. thermocellumは生育できなかった。しかし、酢酸を培地中に添加することによって増殖可能となった。この条件下でもセルロースの分解能力は高かった。現在、この菌の有用性を検討しているところであるが、もし有用性が示されれば、この菌においてヒドロゲナーゼ遺伝子を欠失させる遺伝子操作を施すことを来年度の計画に加える予定にしている。
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