線維肉腫細胞株(HT1080)におけるRECKの強制発現が、培養上清に分泌されてくるpro-MMP-2のプロセッシングに影響を与えること、また、RECK欠損マウスが胎生10.5日前後で内出血を伴って死に至ることを見出し、それらの原因を追求した。その結果、RECKがMMP-2およびMT1-MMPの活性阻害作用を示すこと、また、RECK欠損マウスでは、pro-MMP-2のプロセッシングが亢進し、コラーゲン線維の顕著な減少が見られ、その結果、血管や間絨織の乱れが起こっている可能性が示唆された。この解釈は、MMP-2/RECK2重欠損マウスでは、組織の乱れが軽減し、寿命も半日程度伸びることからも支持された(呉らCell 2001)、また、肝癌、膵臓癌、肺非小細胞癌等において、腫瘍組織でのRECKの発現量が、患者の予後と相関し、MMP-2の活性化、浸潤・転移性、腫瘍血管密度などと逆相関することが明らかとなった(古元らHepatology2001;増井らClih.Cancer Res.2003;竹中らEur.J.Cancer印刷中)。さらに、RECKの過剰発現と類似の効果を持つと予想されるMMP-2/MT1-MMP二重欠損マウスを作成したところ、血管径拡張および筋肉発生に異常をきたし、出生直後に死亡することが判明した(呉らOncocgene2004)。これは、局在や基質特異性が異なるとされるこれら2つのMMPが、機能的冗長性を持つという予期しない結果であり、また、MMPによる細胞外マトリックス・リモデリングの哺乳類個体発生における重要性を初めて実証したものである。
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