研究概要 |
血管リモデリング機構(動脈硬化症、血管新生病、機能的血管新生)について遺伝子導入ベクター(SeV、SIV)を用いて以下の成果を明らかにした。 1.動脈硬化-炎症・修復説: 動脈硬化病変に認められる血管新生が"活動性"動脈硬化病変の病理学的一指標となりうることを提唱してきたが、さらにヒト冠動脈における活動性病変では、炎症ならびに免疫の抑制サイトカインとして知られるTGFβ1-受容体I、II発現(1999)とIL-10発現が低下していることを明らかにした。 2.血管新生における血管新生因子の機能的階層性: 虚血、非虚血マウス下肢骨格筋へのVEGF, FGF-2遺伝子導入実験の結果から、FGF-2は内因性VEGF-A, C, D、HGF発現をも誘導し機能的血管新生を促進した。この血管新生はVEGF機能に依存していたが、VEGF遺伝子導入では必ずしも有効な血流量促進が得られないことから、機能的な組織血管新生には種々の血管新生因子が複合的、有機的に作用しており、血管新生因子間に機能的な階層性があることを示した。さらに、FGF-2によるHGF発現亢進機序はMEKを介した早期発現、さらにp70^<S6K>、Ras/PDGFを介した持続発現機構が関与していた。 3.FGF-2遺伝子搭載Sevによる統合的(integrated)血管新生療法: 我々のFGF-2遺伝子搭載F-欠損型SeVを用いたヒト虚血下肢(閉塞性末梢動脈硬化症、Buerger病)に対する遺伝子治療計画が文部科学省・厚生労働省合同審査会で審議中である。
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