研究課題/領域番号 |
13307010
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
野田 公俊 千葉大学, 大学院・医学研究院, 教授 (60164703)
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研究分担者 |
八尋 錦之助 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助手 (80345024)
桑原 聡 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (70282481)
盛永 直子 千葉大学, 大学院・医学研究院, 助教授 (20092108)
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キーワード | ギラン・バレー症候群(GBS) / Campylobacter jejuni / 急性下痢症 / Haemophilus influenzae / 呼吸器感染症 / 上気道炎 / 抗カングリオシドGM1 / サイトトキシン |
研究概要 |
ギラン・バレー症候群(GBS)は、上気道炎や胃腸炎の1〜3週間後に、急速に進行する四肢の筋力低下、腱反射消失等を主症状とする末梢神経障害である。筋力低下は突然起こり、その日の内に急激に進行することが多い。従って、突然まったく自力で歩行出来なくなったり、咽頭筋麻痺による嚥下障害、さらには呼吸筋麻痺などを呈するケースもあり、人工呼吸など迅速な対応・処置が必要とされる。現在、GBSに対する治療は単純血漿交換と免疫グロブリンの大量静注により、重症化の防止、罹病期間の短縮、後遺症の軽減が図られているが、我国や英国の例では、約8%もの患者が死亡し、1年経過しても走れない患者が約20%、自力で歩けない患者が約7%を占めている。GBSの先行感染の病原体として、発症メカニズムが解明されているものは急性下痢症の起炎菌Campylobacter jejuniと呼吸器感染症を引き起こすHaemophilus influenzaeだけである。後者は我々が1999年に世界に先駆けて原因菌であることを証明したものである。上気道炎の後にGBSが見られることは古くから世界中で良く知られていたが、上気道炎が即GBSにつながるとは限らず長い間本当の原因が判らずにいた。患者数の多い上気道炎とGBSに関係を明らかにした研究は現在のところ我々のものだけである。そこで、更にGBSを起こすGBS誘導型Haemophilus influenzaeを特定する方法が出来れば、世界的な成果となる。 我々は当初の計画通り、次の2点を明らかにする事が出来た。1)Haemophilus influenzaeは、GBSを誘発するタイプと誘発しないタイプに分類できる。前者は菌体表面にガングリオシドGM1様のリポ多糖を有しているが、後者はこれを持たない。従って、抗ガングリオシドGM1抗体を用いることにより、迅速判定ができる。2)GBSを誘発するタイプのHaemophilus influenzaeはさらに血液神経関門を障害する分子量約40,000の蛋白性サイトトキシンを産生する。このトキシンが血液神経関門を破壊し、生体内で誘導された抗ガングリオシドGM1抗体が神経筋接合部前シナプス側のGM1エピトープに接近・結合するのを容易にし、運動ニューロン、運動神経の機能を傷害し筋力低下を誘導する事が示唆された。
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