研究課題
本研究の目的は、1)情報技術を活用して広域の救急医療を支援するシステムを構築する。2)救急救命士のprehospital careを支援するシステムを開発する。3)支援情報を集積し救急医療の質を高めるためのマニュアルを作成する。4)救急医療遠隔支援に適した情報機器を開発することである。平成13年度はまず情報技術を用いた地域救急医療支援システムの構築-よろず相談システム-を立ち上げた。これは情報技術を活用して地域の救急医療を支援するものである。すなわち地域の医療機関で救急医療に携わる医師が、少しでも疑問や不安があれぱ、当センターの医師に24時間いつでも気軽に相談できるシステムである。現在、3カ所の救急告示病院で運用を開始した。担当医と各病院の当該医師は直接動画像電送装置により相手を見ながらの会話が可能であり、単純写真やCT画像、超音波検査・内視鏡検査所見などもデジタル電送により評価できた。さらに備え付けのテレビカメラで患者様自身を診察することも可能であった。担当医は病状を聞き、予測される危険性も含めて必要な検査や処置を助言したり、当該医師や施設の能力を判断して当センターや近隣の救命救急センターへの転送を指示した。このシステムにより重大な事態を未然に防ぐことができた上に、当該医師の教育にもなった。具体的に行った救急医療支援の内訳は、四肢骨折等の画像診断3件、頭部外傷や胸部外傷、腹部外傷等のCT評価8件、卵巣嚢腫の茎捻転や、十二指腸潰瘍穿孔などの急性腹症の相談5件、敗血症性ショック患者の評価2件、急性冠症侯群の心電図評価と支援2件、その他6件であった。将来的には無線通信が可能な軽量で手持ち搬送が可能な機種に改良し、救急救命士のprehospital careの支援にも応用する予定である。さらに本情報機器を用いた地域救急医療支援を充実させ、集積された相談内容を解析し実践的な救急医療教育に役立てるとともに相談マニュアルを作成しこのシステムの普及を図る。
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