研究課題
本研究の目的は、1)情報技術を活用して広域の救急医療を支援するシステムを構築する。2)支援情報を集積し救急医療の質を高めるためのマニュアルを作成する。3)救急救命士の病院前救護を支援するシステムを開発する。4)救急医療遠隔支援に適した情報機器を開発することである。前年度はまず地域救急医療支援システムの構築-よろず相談システム-を立ち上げ、3カ所の救急告示病院で運用を開始した。担当医と各病院の当該医師は直接動画像電送装置により相手を見ながらの会話が可能であり、単純写真やCT画像、超音波検査・内視鏡検査所見などもデジタル電送により評価できた。さらに備え付けのテレビカメラで患者様自身を診察することも可能であった。本年度はデーター解析を行うためのソフト面の充実に焦点を当てた。受信日時、担当者、相手病院・担当医、症例の基本データ、傷病名、相談内容、指示内容、その他を集積し解析するソフトを立ち上げた。ソフト立ち上げの平成14年9月から15年2月までに計45例の相談があった。うち救命センターへ転送を指示する必要のあった症例は7例で内訳は、呼吸不全2例、低カリウム血症、大腸穿孔、卵巣嚢腫の茎捻転、後腹膜出血、敗血症性ショック各1例であった。他の症例は画像診断に関する相談と、治療方針に関する相談が大半を占めた。担当医は病状を聞き、予測される危険性も含めて必要な検査や処置を助言したり、当該医師や施設の能力を判断して当センターや近隣の救命救急センターへの転送を指示した。このシステムにより重大な事態を未然に防ぐことができた上に、当該医師の教育にもなった。今後は本情報機器を用いた地域救急医療支援を充実させ、集積された相談内容を解析し実践的な救急医療教育に役立てるとともに相談マニュアルを作成しこのシステムの普及を図る。さらに無線通信が可能な軽量で手持ち搬送が可能な機種に改良し、救急救命士の病院前救護の支援にも応用する予定である。
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