研究課題
本研究の目的は、1)情報技術を用いて広域の救急医療を支援するシステムを構築する。2)支援情報を集積し救急医療の質を高めるためのマニュアルを作成する。3)救急救命士の病院前救護を支援するシステムを開発する。4)救急医療遠隔支援に適した情報機器を開発することである。前年度までに地域救急医療支援システムの構築-よろず相談システム-を立ち上げ、3カ所の救急告示病院で運用を開始した。さらに受信日時、担当者、相手病院・担当医、症例の基本データ、傷病名、相談内容、指示内容、その他を集積し解析する基本ソフトを立ち上げた。ソフトを立ち上げ運用を開始してから今までに62件の相談があった。救命センターへ転送の指示を要した症例は18例(29%)で内訳は、急性呼吸不全、低カリウム血症、大腸穿孔、卵巣嚢腫の茎捻転、後腹膜出血、敗血症性ショックなどであった。他の症例は救命センターへの転送が不要で、画像診断に関する相談と治療方針に関する相談が大半を占めた。これらの症例に対しては、経過観察を行う指示や侵襲的治療に踏み切るべき症状・徴候などの助言、診断のために追加する検査について助言を行った。担当医は病状を聞き、予測される危険性も含めて必要な検査や処置を助言した。また当該医師や施設の能力を判断して当センターや近隣の救命救急センターへの転送を指示した。本システムを活用することにより重大な事態を未然に防ぐことができた上に、当該医師の教育にもなった。本システムへの依頼時間は30%が日中の時間帯であったが、70%は午後5時以降であった。これは夜間は上級の相談医が各施設内におらず、手薄な状況下で若手の医師が専門的な分野の情報援助を必要としていることを意味する。本研究により、地域基幹救急告示病院の夜間医療システムの問題点も明らかになった。現在は今までの集積データを基に、情報依頼対応マニュアルを作成中である。
すべて その他
すべて 文献書誌 (7件)