研究概要 |
本研究の主題である先天性免疫不全症の簡易診断と免疫異常発達に関して、(1)主としてX連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)の診断を全国レベルで簡易診断と遺伝子解析を併用して実施、(2)X連鎖リンパ増殖症候群(XLP)については、責任遺伝子産物SAPに対する単クローン抗体を用いたフローサイトメトリーによる簡易診断法の確立、(3)先天性免疫不全症診断の国際協力事業の推進、(4)B細胞活性化におけるXLA遺伝子産物BTKの役割とXLA患者単球の遺伝子発現異常の解析、などを行い、以下の結果を得た。 1)XLAについて全国からの依頼に対応し、平成14年度中に新たにXLA7例を同定し、症例報告も行なった(Int Med 41:1039,2002,Brain Dev 24:109,2002)。成人発症のXLA症例が少なからず存在することから、XLAの臨床的多様性をより明らかにする意味で成人XLAの発掘を開始した。 2)新たに作成したXLP責任遺伝子産物SAPに対する単クローン抗体を用いフローサイトメトリーによるXLPの簡易診断の可能性を確認し(Int Immunol 14:1215,2002)、平成14年度に新たに1例のXLPを同定した。本抗SAP抗体は、外国研究者に共同研究の一貫として随時供与している。 3)先天性免疫不全症診断の国際協力を積極的に推進し、ブラジル(Hum Mut 20:235,2002)、韓国(Hum Mut投稿中)、イラン(Clin Exp Immunol投稿中)におけるXLAの遺伝子診断の援助を行なった。さらに、中国上海医科大学小児病院に赴き、フローサイトメトリーによる簡易診断法と遺伝子診断を教授するともに、共同研究により今後の中国における先天性免疫不全症の遺伝診断や登録事業の推進を図ることとした。 4)B細胞活性化におけるXLA遺伝子産物BTKの役割について、XLA由来EBウイルス形質転換株を樹立、B細胞の活性化に伴う細胞内シグナル伝達でBTKがRac1経路を介するJNK1反応に関与することを明らかにした(FEBS Lett 13:514,2002)。B細胞に加え単球に発現するBTKの生物学的意義を明らかにするために、LPS刺激単球に誘導される遺伝子群についてDNAチップを用いて検討したが、有意な結果を得ていない。
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