研究概要 |
本研究の主題である先天性免疫不全症の簡易診断と免疫異常発達に関して、(1)X連鎖無ガンマグロブリン血症(XLA)などの先天性免疫不全症の遺伝子診断を全国レベルおよび国際協力事業として実施、(2)XLA患者単球と患者由来樹状細胞の機能異常の解析、(3)先天性免疫不全症例の臨床遺伝学的検討、(4)成人期にある無ガンマグロブリン血症の遺伝子変異解析、などを行い、以下の結果を得た。 1)全国あるいは開発途上国から依頼のあった多数の無ガンマグロブリン血症の遺伝子診断に積極的に対応し、韓国(J Hum Genet 48:322,2003)および中国(J Clin Immunol,投稿中)のXLAを報告、イランの低ガンマグロブリン血症の中にX連鎖リンパ増殖症候群(XLP)を発見(Int J Hematol 78:45,2003)、X染色体の不活化の異常な偏りにより保因者でありながら臨床的に無ガンマグロブリン血症を発症した世界第1例目となる女性XLAを記載した(Blood 103:185,2004)。 2)単球、樹状細胞に発現するXLA遺伝子産物BTKの機能的役割を明らかにするために、XLA患者の単・球の貧食能と遊走能(J Invest Allergol Clin Immunol.13:181,2003)、XLA患者樹状細胞のサイトカイン産生能(Clin Exp Immunol 133:115,2003)について正常者と比較検討した。 3)先天性免疫不全症の臨床遺伝学的多様性を明らかにする意味で、症例報告にも努め、糸球体腎炎にて発症した自己免疫性リンパ増殖症候群(ALPS:Fas変異)(Pediatr Nephrol 18:454,2003)、IgA腎症を併発したX連鎖血小板減少症(WASP変異)。(Am J Kidney Dis 143:e7,2004)、全身性血管炎を呈したXLP(Brit J Haematol,投稿中)などを報告した。 4)成人期にある無ガンマグロブリン血症には小児期からキャリーオーバーした先天性免疫不全症と後天性のものが存在すると考えられる。臨床免疫学会員を対象に全国調査を実施、先天性免疫不全症の責任遺伝子変異解析を実施、遺伝子解析希望23例の中に、XLA2例、XLP1例、X連鎖高IgM症候群(CD40リガンド変異)1例、選択的IgG1欠損症(IgG1遺伝子欠失)1例、計5例を同定した。この検索は現在進行中である。
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