一卵性双生児不一致別のゲノム解析によるメチル化機構の精神疾患成因への関与の解明

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 13307027
• 研究機関: 三重大学
• 研究代表者: 岡崎 祐士 三重大学, 医学部, 教授 (40010318)
• 研究分担者: 加藤 忠史 理化学研究所, 脳科学総合研究センター, チームリーダー (30214381) ; 辻田 高宏 長崎大学, 医学部, 講師 (40304919) ; 陣野 吉廣 琉球大学, 医学部, 教授 (20179097) ; 佐々木 司 東京大学, 保健管理センター, 助教授 (50235256) ; 山下 秀次 九州東海大学, 農学部, 講師 (20289630)
• キーワード: メチル化 / 遺伝子発現 / 精神疾患 / 一卵性双生児 / 統合失調症 / 双極性障害 / 自閉症

研究概要

本年度の実績
研究代表者の研究計画にしたがって、分担研究者は以下の成果をあげた。
1.陣野・平松:DNAメチル化は方法の改良により5-methyl deoxy cytidine (mC)分離が著しく改善、データ質が向上した。総メチルCは加齢性減少と性差(男>女)が認められた。総メチルCの解析を統合失調症患者86例,コントロール46例完了した。各200例の解析を行う。メチル化組織特異性を2遺伝子(DRD2,HTR2A)について行い、HTR2Aは組織間及び部位間でメチル化程度の差が顕著で、脳(非メチル化)<胎盤(低メチル化)<血液(partial methylation)<肝臓(高メチル化)という傾向があった。また、潜在的発現能力を有するRNAレトロウイルス遺伝子HERV(メチル化により不活化)中、統合失調症連鎖部位に存在する2つを同定した。
2.山下・辻田・今村:二重蛍光FRGP法(商品化交渉中)の開発等により、ゲノム差異検出精度を向上させ自閉症一卵性双生児例で差異を認めた4FRGPスポット中2スポットの染色体上の位置を同定した。その周辺の遺伝子の検索と機能を検討中である。また、ナルコレプシー例を解析中である。
3.加藤(忠史):一卵性双生児躁うつ病不一致例2組のリンパ芽球遺伝子発現をマイクロアレイで解析、双生児間で2倍以上の差異を示す遺伝子を見出した。その中で双極性障害の病態に関連する遺伝子に着目して解析を実施中である。なお、岡崎は統合失調症不一致一卵性双生児と同性の健常一卵性双生児例における遺伝子発現を現在解析中である
4.佐々木:環境要因が遺伝子発現修飾する可能性とメチル化の関与を検討する目的で、統合失調症とHLA_DR-1陽性との相互作用所見から、HLA-DR1陽性、陰性者の候補遺伝子のメチル化の差異、遺伝子発現への気温の影響とメチル化度との関連を検討中である。
以上の結果は、多くが投稿中である。

研究成果

• [文献書誌] Kato C, Petronis A, Okazaki Y, Tochigi M, Umekage T, Sasaki T.: "Molecular genetic studies of schizophrenia : challenges and insights"Neurosci Res. 43・4. 295-304 (2002)
• [文献書誌] 加藤忠史: "DNAマイクロアレイの精神疾患の臨床検査法への応用可能性"精神科. 1:5. 424-426 (2002)
• [文献書誌] Matsumoto S, Sasaki T, Imamura A et al.: "HLA classl distribution in Japanese patients with schizophrenia"Am J Med Genet. 114・1. 42-45 (2002)
• [文献書誌] Fujimaru K, Imamura A, Tsujita T et al.: "Minor Physical Aomalies in Japanese Patients with Schizophrenia"Acta Med. Nagasaki. 47・1. 133-137 (2002)
• [文献書誌] 藤丸浩輔, 辻田高宏: "一卵性双生児のゲノムの不一致について"分子精神医学. 2・3. 260-261 (2003)
• [文献書誌] 加藤忠史, 岡崎祐士: "統合失調症(精神分裂病)へのポストゲノム的アプローチ"実験医学. 21・1. 42-46 (2003)
• [文献書誌] 佐々木司, 岡崎祐士: "新世紀の精神科治療第1巻「統合失調症の診療学」(岡崎祐士編)"統合失調症成因の多様性と疾患過程のダイナミズム pp. 17-29. 357 (2002)