研究分担者 |
甲斐崎 祥一 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (70291325)
北山 丈二 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (20251308)
渡辺 聡明 東京大学, 医学部附属病院, 助教授 (80210920)
堀 信一 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (90282631)
津野 寛和 東京大学, 医学部附属病院, 助手 (50282637)
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研究概要 |
癌の遠隔転移を規定する因子として、S1P(Sphyngosine-1phosphate)LPA(Lysophosphatidic acid),血流による物理的shear stressとリンパ管内皮への接着、および、胃がん組織におけるVEGF-C,-Dの発現に注目した検討を行った。 1.S1P, LPAは様々な細胞膜に豊富に含まれるリン脂質で、癌細胞に種々の影響を与えることが知られている。マウスメラノーマB16の細胞株に、この受容体であるEDG1,3,5を導入して、これらの細胞に対するS1Pの影響を調べた。S1Pはngオーダーで、EDG1,3導入株に対して、運動の促進、転移の増加傾向をもたらしたが、EDG5導入株に対しては著名な抑制効果をもたらした。この効果は、small G protein racの阻害によって,有意に抑制された。また、LPAは、大腸がん細胞株の増殖、浸潤を促進し。VEGF, IL-8などの血管新生物質の産生を誘導した。2.ラットのリンパ管内皮細胞を採取、培養し、その上に、ラット胃がんBV9を環流しリンパ管内皮細胞への接着を検討した。生理的リンパ流を模した変動流の存在下にて、BV9は血管内皮よりより高率にリンパ管内皮に結合した。3.105例での早期胃癌の切除標本にて、リンパ管造成を促進する増殖因子あるVEGF-C,-Dの発現を免疫染色にて検討した。VEGF-C,-Dの発現には正の相関関係があり、未分化型の胃癌においては、リンパ節転移の有無と強い相関関係が認められた。特に、VEGF-C,-D共に発現していない未分化型早期胃癌全例でリンパ節転移陰性であった。同様の検討を、生検材料を用いて行い、切除標本よりもむしろより強い相関関係を認めた。これらの因子の発現は、早期胃がんにおけるリンパ節転移の予知因子となることが判明した。
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