研究課題
破骨細胞分化において、カルシウムシグナル依存性に誘導されるNEATc1がマスター転写因子であることが明らかになったが、NFATc1活性化に必要なカルシウムシグナルの活性化がどのようなメカニズムで誘導されるのかは不明であった。RANKのようなTNFファミリーの受容体が直接カルシウムシグナルを活性化することは考えにくかったからである。われわれは、ITAM(immunoreceptor tyrosine-based activation moif)をもつアダプター分子であるDAP12(DNAX activating protein 12)の欠損細胞において破骨細胞分化の異常があることから、免疫細胞でカルシウムシグナルを活性化するITAMが破骨細胞分化においても重要な役割をもつ可能性があるのではないかと考えた。DAP12欠損マウスの骨髄細胞はin vitroでは破骨細胞分化が障害されているが、骨芽細胞との共存培養では分化がレスキューされ、マウスの生体レベルでも正常数の破骨細胞が観察されることから、in vivoにおいてはDAP12の機能は他の分子によって代償されていることが予想された。われわれは、以下の理由からFc receptor common □ subunit(FcR□)が代償分子と予想した。レスキューする受容体の候補となるosteoclast-associated receptor(OSCAR)がFcR□会合性受容体であったこと。破骨細胞前駆細胞のDNAチップを用いた発現解析から、ITAMをもつアダプター分子の中で、DAP12の次に高発現するのはFcR□であること。そこで、DAP12とFcR□のダブル欠損マウス(DKO)を作成した。DKOは、in vitroでもin vivoでもほぼ完全に破骨細胞分化が障害され、骨髄腔が形成されない重篤な大理石骨病を呈した。DKO由来の破骨細胞前駆細胞にレトロウイルスでDAP12を発現させると、野生型(WT)のDAP12では効率よくレスキューされるが、HAMのリン酸化部位に変異を入れたDAP12においては、レスキューされないことから、破骨細胞分化においてITAMを介したシグナルが重要な意義をもつことが示された。DAP12とFcR□は、単独では細胞膜上に発現できない免疫受容体と会合することで、その受容体の膜上での発現を誘導するとともに、受容体からのシグナルをITAMを介して下流に伝えるアダプター分子である。それでは、破骨細胞前駆細胞においてFcR□及びDAP12に会合する受容体は何なのであろうか?われわれはOSCAR、paired immunoglobulin-like receptor(PIR)-A、及びtriggering receptor expressed by myeloid cells(TREM)-2、signal-regulatory protein(SIRP)□1といった免疫グロブリン様受容体がそれぞれFcR□及びDAP12と会合することを同定し、それらの受容体を抗体により架橋刺激すると破骨細胞分化が促進することを明らかにした。FcR□およびDAP12のITAMは免疫受容体とRANKLの両方に依存してリン酸化され、phospholipase C(PLC)□を介してCa_<2+>シグナルを活性化することでNFATc1を誘導する。このように、免疫受容体がDAP12またはFcR□のITAMを介して伝えるシグナルは、RANKLの共刺激シグナルとして破骨細胞分化に必須であることが解明された
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