研究課題
基盤研究(A)
われわれは、神経幹細胞移植の至適時期を決定するために、損傷脊髄内の種々のサイトカインや神経栄養因子の発現の変化を調べ、至適時期が脊髄損傷後1〜2週であることを報告した。この結果に基づき、ラット脊髄損傷後9日目にラット神経幹細胞移植を行い、移植細胞の良好な生着とニューロン、オリゴデンドロサイトへの分化を認め、さらに運動機能の回復が得られることを報告した。次に、脊髄損傷に対する神経幹細胞移植を臨床応用するためには、霊長類であるサル脊髄損傷に対するヒト神経幹細胞移植の有効性を確認することが重要と考えた。第一段階として、損傷程度の異なるサル脊髄損傷モデルと機能評価法を確立し、この損傷モデルを用いて齧歯類と同様に損傷後9日目にヒト神経幹細胞移植を行い、移植細胞の生着、ニューロン、オリゴデンドロサイト、アストロサイトへの分化を認め、さらに移植による有意な運動機能の回復がみられた。これらの結果は近未来における脊髄損傷に対する神経幹細胞移植の臨床応用に向けた大きな一歩であることは言うまでもない。しかし、慢性期脊髄損傷患者への臨床応用を考慮すると、損傷部で軸索伸展を阻害するグリア瘢痕の克服が必須と考えた。そこで、脊髄損傷後に発現の増加が見られるIL-6が内在性及び移植神経幹細胞をアストロサイトへと分化誘導しグリア瘢痕組織を形成する因子であることに着目し、マウス脊髄損傷後にIL-6受容体抗体を腹腔内投与することにより、損傷部周囲の反応性グリア組織と線維性瘢痕組織の有意な縮小、さらには運動機能の有意な回復が得られた。さらにセマフォリン3Aに対する阻害剤をラット胸髄完全切断損傷モデルに投与し、損傷軸索の再生と機能評価を行った。薬剤投与群では損傷部を貫き再生した軸索が数多くみられ、これらはシュワン細胞により髄鞘化されていた。また薬剤投与群で下肢運動機能も有意に良好な回復がみられた。今後はこれまでの研究により有効性が確認できた治療法を組み合わせることにより、我が国発のヒト脊髄損傷に対するヒト幹細胞を用いた世界で初めての治療法を近未来に確立できると考えている
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